映画「国宝」

公開早々に観てきました

かなり前に映画館で予告を観た時に
「なんだか凄い映画だぞ」と気になっていた作品

原作は吉田修一氏
好きな作家さんだし
配役もなかなかなキャスティング
監督もフラガールの監督さんならばステージの演出はきっと凄いだろうし
これはこれは気になるぞ

…とまずは公開前に原作を読了

予想外にものすごーい話で泣きました(涙)

著者も3年間歌舞伎の世界で黒衣をしたとの事で
とてもリアルで臨場感もありました

私は決して歌舞伎に詳しい訳でもなく
ご贔屓の役者さんもいるわけではないし
実際に歌舞伎座で観た事はほんの数回ですが
歌舞伎は好きなのです

本当に詳しくは無いのですが
舞台の上では全てがアナログ
代々継がれた役を演じる役者さん以外の
生の舞台での三味線を始めとする音や
幕や装置も人の手と技で成り立っている事に魅了されます

さて本題

映画の配役を知って原作を読んだので
上下巻の長いお話でもすごく入り込みやすかったです

原作のずっしりとした重量感を知ってからの映画鑑賞は絶対に泣く!と判っていたので
お化粧もマスカラは付けずに挑みましたよ(笑)

本は読む
映画は観る

この作品は良いとこ取りのような…
歌舞伎の映像を通して本の活字に色が宿った感じの作品に思いました

ネタバレがあるかも

※自分の備忘録的に長く語りますので
この映画に興味のない方と
これから映画を観る方でネタバレが嫌な方はここでストップしてくださいね

まず冒頭の新年会のシーンから泣きそうに…
余興とはいえ無邪気に舞台に立つ幼き喜久雄(後の吉沢亮さん)

この後の喜久雄の波瀾万丈な役者人生を知っている私としてはなんとも言葉にならない想いがありました
ここから始まるんだね、と

余談になりますが
少年時代の喜久雄役の俳優さんもすごく上手でした
映画「怪物」の主演の男の子
この映画も観なくては!と思っていたので近々観ます

そしてこの映画の見どころの1つでもある歌舞伎のシーンは圧巻です
どれだけどんな稽古をされたのか!

両者の綺麗な顔立ちはもちろんですが
ちゃんと歌舞伎の女形としての踊りや所作が本当に柔らかく素晴らしい

腰を落とした曲線美
着物の裾さばきや首の角度や指先までのしなやかさ
吉沢さんも流星さんもまぁ美しい

歌舞伎界の血筋ありきの正統派な歌舞伎役者を横浜流星さんが演じて
天性の魅力と努力の賜物…だけでなく
任侠の血も流れるせいか
どきっとする眼差しの鋭さに加えて
妖艶な色香が漂う喜久雄を吉沢亮さんが演じます

もはや両者共に女性よりも美しく色っぽいので
私なんぞは白旗ぱたぱたです(笑)

白塗りも紅もまぁ美しい…

それぞれが演じた「曽根崎心中」は簡単には言葉に出来ません
「足」の演出が印象的です

おそらく原作を知っているからかもしれませんが
どのシーンも2人の心情や決意が伝わってきました

友情とも取れるし
同志であるが故の苦悩
尊敬とも思えるような
お互いを認めざるを得ない両者の葛藤

また寺島しのぶさんがおかみさん(流星さんの母親役)で出ているのですが
映画が引き締まるだけではなくて
流石に現実の歌舞伎界の中で育っているだけあって
あれ?これは歌舞伎界のドキュメンタリー映画かな?と錯覚しそうになりました
それくらいリアルでした

ほんとにネタバレ

ご注意くださいね

ラストシーンでは
どうかどうかこのまま舞台のシーンで終わって〜と祈るばかり
原作とは違う結末に救われたので良かったです

あと最後!
鷺娘の衣装を纏った半次郎が楽屋から出るときの暖簾の右下!
原作を知ってる人しかわからないけど
私は「おぉっ!」と嬉しくなりました

宿命と運命
そして役者魂と生き様

緊張感のある3時間でしたが
引き込まれっぱなしで長くは感じませんでした

原作のいろいろなエピソードは端折られているのはいたしか無いとは思いますが
兎にも角にも素晴らしい映画でした